気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)

気候変動に対する基本的な考え方

当社グループは気候変動が世界共通の重要課題の一つであると認識し、2022年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言に賛同しました。
また、TCFD提言に沿って、気候変動に関連するリスクと機会を識別し、それらの財務的影響を分析・評価し、レジリエンスを考慮して取り組みを検討いたしました。
今後も気候変動に関連するリスクおよび機会の評価や管理を行い、適切な情報開示を行うとともに、脱炭素社会を実現する取り組みに努めてまいります。

ガバナンス

サステナビリティ委員会

当社グループでは、代表取締役社長を委員長とし、執行役員をメンバーとするサステナビリティ委員会を2022年4月に設置しています。気候変動に関わる重要事項等を検討、審議した上で、取り組み方針を決定し、その活動状況をモニターします。また、サステナビリティ委員会の活動の内容は取締役会へ報告され、監督される体制となっています。
今後、事業戦略の策定や投融資等に際しては、環境方針や気候変動に係る重要事項を踏まえて総合的に審議し、気候変動に関するガバナンスの強化を進めていきます。

チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)

2022年8月、サステナビリティに関する各種施策や取り組み、社内外への発信の強化を目的としてチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)を任命しました。CSOは当社グループにおけるサステナビリティ推進の責任者として、関連方針の策定・体制整備および関連施策の立案と進捗管理等にイニシアティブを発揮しています。

戦略

当社グループでは気候変動がもたらす自然災害の激甚化や環境の変化について、関連するリスクを想定し、ビジネスに与える影響の特定に努めています。気候変動が当社グループにもたらす影響について、TCFDが提唱するフレームワークに則り外部環境の変化を予測し、分析しました。

リスクと機会

気候変動に起因するリスクには、大型の台風、干ばつ、酷暑といった異常気象によって人的被害や財産上の損害が生じるリスク(物理的リスク)と、脱炭素社会への移行に向けた各国政府の政策変更や急速な技術革新に伴う変化に対応できず取り残されるリスク(移行リスク)があります。一方で、それらのリスクに適切に対応できれば、競争力の強化や新たなビジネス機会にもつながると認識しています。

リスク・機会の認識

事業インパクト 影響度
リスク 機会 短期2030年 長期2050年
移行リスク 政策・規制 炭素税の導入、省エネ・排出規制 炭素税の適用により、事業を行う際のGHG排出量に係るコストが増加。省エネ、排出規制強化への対応遅れによる違反リスクが拡大。 事業所への太陽光発電システムの設置や、配送車両のEV化等の投資を行った結果、GHG排出量が削減しコストが低下。また、省エネ対応を行うことにより公的支援や減税の対象となる可能性あり。
市場 エネルギー価格推移 化石燃料・電力価格の高騰により、施設・事業所の操業コストが増加。 消費者のサステナブル志向に伴う市場動向の変化により、排出削減・環境負荷の小さい事業展開を行っている企業が選ばれる機会が拡大。
技術 低炭素技術の普及 高効率な低炭素技術・設備・機器の導入により、コストが増加。 環境配慮車両の燃費性能向上により燃料費などのコストが低下
物流効率化、省エネ機器の導入によりエネルギーコストが低下。
評判 顧客の評判変化 GHG排出量削減等、環境負荷低減への取り組みに適切に対応できない場合、評判リスクが拡大。 GHG排出量削減等、環境負荷低減への取り組みに適切に対応し、評判の機会が拡大。
物理リスク 慢性 平均気温の上昇 施設・事業所の冷房・冷蔵等に必要なエネルギーコストが増加。 通気性、快適性を考慮したサービス提供への需要が拡大。
降水・気象パターンの変化 森林火災・樹木の病害虫等の発生により木材調達コストが増加し、紙おむつ等木材を原料とする商品の供給が不安定化し調達原価が増加。食材原材料の生産量や生産適地が変化し、供給が不安定化し、調達コストが増加する。 サプライチェーンの見直しによる効率化、多様化。
降雨・強風の増大に伴い施設・事業所の被災が増加し、修復費用・人件費・保険料支払等のコストが増加。
急性 異常気象の激甚化 異常気象の影響による強靭化のための設備投資が増大。また、被災に備えた防災対策装備の重厚化によりコストが増加。 地域全体での防災対策の取り組み深化により、効率的・効果的な防災の仕組みを確立。
被災により、事業に必要な商品や食材のサプライチェーンの断絶により、代替調達を行うためのコストが増加。 サプライチェーンの見直しによる効率化、多様化。

シナリオ分析

次に、TCFDが重要視している気候関連のシナリオ分析を行いました。
シナリオの設定にあたっては、IPCC第6次評価報告書におけるSSPシナリオやRCPシナリオを参照し、①進展シナリオとしての1.5℃上昇シナリオ、②標準シナリオとしての2℃上昇シナリオ、③停滞シナリオとしての4℃上昇シナリオを想定しました。

No. シナリオ 該当する
RCP
シナリオ
該当する
SSP
シナリオ
想定される
気温上昇
シナリオ概要
1 進展シナリオ
(低位安定化シナリオ)
RCP1.9 SSP1
(持続可能性/
グリーンロード)
1.5℃ 社会・経済・技術の革新による世界の持続可能な社会への移行は、著しく進展した。世界人口は安定的な増加傾向を維持している。経済的格差(貧富の差)は一定程度緩和され、各国政・統治も安定している。気候変動に対する各国の対策やグローバル規模の規制も厳格化が進み概ね足並みが揃っている。国内においては高齢化・少子化が進んだものの、行政による労働市場の最適化対策等により、労働集約型のセクターにおける人材確保も以前よりも容易となった。
2 標準シナリオ
(中位安定化シナリオ)
RCP4.5 SSP2
(中間型/ミドル・
オブ・ザ・ロード)
2℃ 社会・経済・技術の革新による世界の持続可能な社会への移行は、一定程度進展が見られるものの十分ではない。人口成長は21世紀後半にかけて鈍化し、世界人口は横ばいに。経済的格差(貧富の差)はさらに広がり、各国政・統治の不安定要因となっている。気候変動に対する各国の対策やグローバル規模の規制は厳格化したものの必要なレベルには到達していない。国内においては高齢化・少子化が進み、労働集約型のセクターにおける人材確保が困難な状況が続いている。
3 停滞シナリオ
(高位参照シナリオ)
RCP8.5 SSP5
(化石燃料依存・
開発/ハイウェイ)
4℃ 社会・経済・技術の革新による世界の持続可能な社会への移行は、破綻している。人口成長は21世紀後半にかけて大きく減少。経済的格差(貧富の差)は著しく広がり、各国政・統治に大きな影を落としている。気候変動に対する各国の対策やグローバル規模の規制は足並みが揃わず、実効性を伴っていない。国内においては高齢化・少子化の悪化に加え、対策不足により、労働集約型のセクターにおける人材確保が非常に困難である。

その結果、③の4℃上昇シナリオが想定する社会への影響は甚大であり、シナリオ①の気温上昇を1.5℃以下に抑えることに貢献していくことが必要であると考えました。これは、当社グループの重要課題(マテリアリティ)「地球環境に負荷をかけない企業活動の推進」としても定めています。

シナリオを踏まえた戦略・取り組み

1.5℃以下シナリオの世界では、気候変動の影響が抑えられるため、物理的リスクの影響よりも、気候変動を抑えるための移行リスクの影響が大きくなると考えます。
この認識に基づくと、当社グループの事業が及ぼす環境負荷を特定し、環境性能向上に関する投資を実施しない場合、市場からの評判が低下して顧客が流出するなど、事業への影響が大きくなるリスクがあると判断しました。
現在、2022事業年度における二酸化炭素排出量の把握を行っております。そのプロセスの中で具体的に環境負荷の高い項目を特定したうえで、削減するための取り組みを推進していきます。また、1.5℃以下シナリオの世界では、投資家の気候変動に関する課題への関心や企業の果たす役割への期待がますます高まることが予想されるため、気候変動に関する課題への取り組み状況・非財務情報を積極的に開示していきます。
なお、当社グループでは以前から従業員に対し環境問題への理解を促すと共に、GHG排出量削減への取り組みや環境に配慮した製品の利用など、環境・資源対策に取り組んでいます。

  • 施設等のLED照明への切り替え、省エネタイプのエアコン導入
  • 森林の環境保全に配慮したFSC森林認証紙の使用
  • おそうじ本舗における環境に配慮した製品、洗剤の利用
  • ペーパーレスへの取り組み 等

リスク管理

当社グループでは、リスク管理の状況を把握しリスク管理活動の推進を行うために、委員長をリスク管理統括責任者である社長とするリスク管理委員会を設置し、四半期に1回開催しております。四半期ごとに開催されるリスク管理委員会では、各部門のリスクアセスメント結果をもとに、影響度・発生可能性の2側面でマトリクス分析を行い、リスクを選別・評価してその結果を取締役会に報告しています。
気候変動リスクについては、サステナビリティ専任部署であるサステナビリティ推進部が中心となり気候変動関連リスク・機会の見直しを行います。そのうえでサステナビリティ委員会を中心に各種方針・戦略を策定し、進捗状況のモニタリング・管理を行う体制としています。

指標と目標

現在、当社グループの2022事業年度のGHG排出量の測定を行っており、今後、グループ全体でのデータ統合を図ります。事業活動における環境負荷低減の中長期目標を速やかに設定し、Scope1、2のGHG排出量削減を推進します。Scope3につきましても、実態調査を行い、ステークホルダーと協働したGHG削減を進める計画です。また、設定した指標・目標については定期的なモニタリングを実施します。
GHG排出量削減をはじめとした気候変動対応を推進することで、当社グループのレジリエンスを向上し、脱炭素社会の達成に貢献してまいります。